イントロダクション

右翼、左翼、元オウム真理教信者、
どうしてそんなに色々な人たちと仲良くできるの!?

長年、右翼活動家として活動しながらも、元赤軍関係者や、元オウム真理教信者たち、元警察官からグラビアアイドルまで、様々な人たちと交流をし続ける謎の政治活動家・鈴木邦男76歳。前回制作したドキュメンタリー映画「ナオトひとりっきり」のトークゲストとして来てもらったことをきっかけに、彼に興味をもった私、映画監督・中村真夕。2年間、鈴木に密着し、その思想遍歴をたどる中で、どのようにして彼が政治や宗教の境界を超えて、様々な人たちと交流するようになったかが見えてきた。異なる意見や価値観を持つ人たちに対しての不寛容さが強くなっている今の日本社会で、鈴木のボーダーレスな存在から、この映画で何か突破口を示唆できるのではないかと願っている。

「愛国者に気をつけろ!」と叫ぶ、謎の右翼活動家・鈴木邦男
教科書にのっていない戦後の歴史がここにある!

生長の家の信者の家に育ち、早稲田大学では左翼と闘ってきた生粋の右翼活動家・鈴木邦男。17歳の時に初めて、同い年の大日本愛国党の元党員・山口二矢が、社会党党首を刺殺する映像に衝撃を受け、愛国のために身を捧げることに目覚めたという鈴木。大学時代には、今の日本会議の前身となる全国学協の代表まで登りつめたが、まもなく失墜。
その後新聞社に就職するも、右翼運動に自らが引き入れた早稲田大学の後輩、森田必勝が25歳にして、三島由紀夫と自決したことに衝撃を受け、職を辞し政治団体・一水会を立ち上げることに。政治的・思想的な挫折と葛藤を繰り返す中で見えてきたのは、自らが訴えてきた「愛と正義」、「愛国心」でさえも疑い、そして異なる意見や価値観を持つ人たちの言葉に耳を傾けることだった。社会から疎外された者たちに向ける鈴木のまなざしは限りなく優しさに満ちている。そんな数奇な運命を生き抜いてきた鈴木邦男の素顔に密着したドキュメンタリー映画だ。麻原彰晃の三女・松本麗華、元オウム真理教の幹部・上祐史浩、元日本赤軍で映画監督の足立正生、作家・雨宮処凛、拉致被害者家族会の元副代表・蓮池透など多彩な人たちが鈴木について語る異色のドキュメンタリー。共同プロデューサーは、「沖縄うりずんの雨」や「毎日がアルツハイマー」など数々のドキュメンタリーの話題作を生み出してきたシグロの山上徹二郎が務める。

監督コメント

「若松孝二監督が突然、亡くなった時、誰も監督についてのドキュメンタリー映画を作っていなかったことをとても残念に思いました。60年代、70年代という激動の時代を知っている人たちもすでに70代、80代になっています。今、この時代を生きた人たちを記録しなければ、この時代は忘れられてしまうという強い焦燥感を感じ、この作品の制作にとりかかりました。鈴木邦男さんの人生を見ていくと、日本の戦後の政治の流れが見えてきました。鈴木さんの人生を記録に残すことは、戦後の日本を検証し、そしてこれからの日本の行き先を考える上で、とても重要だと思います」

コメント

『若者(青年)は荒野をめざす』という本があった。1960年代だ。呑気な時代だったのだと思う。荒野というのはどこで何を指すのか。いずれにしろリアリティがゼロだ。「若者は山里をめざす」、こちらはリアルにあふれている。若者が触れたものが明確に示される。触れたものへの感動が伝わってくる。太古の昔から、わたしたちはそうやって何かと出会ってきたのだ。

村上 龍 作家

コロナ禍でテレワークが増えても、東京の転入超過は続いている。「東京にはなんでもあるが、田舎には何もない」と言う若者は少なくない。一度、都会で暮らすと地元に戻りにくく、高齢化が進む地域は消滅の一途をたどる。だが、西沙耶香さんは、一度は東京に出たものの、故郷「東秩父村」が近い将来消滅すると知り、Uターンを決意する。農産物のノゴンボウを特産品にしたい、伝統手漉き和紙「細川紙」を継承したい、という若者たちもやってくる。若者たちを温かく迎え入れる東秩父村の高齢者たちが素敵だ。こうしたI ターン移住者と地域との橋渡しをする西さんの存在は大きい。

何もないはずの田舎に、実は人が生きるための大前提である“自然”がまだ残され、その地域にしかない宝があることに気づかされる。都会の経験があるからこそ掘り起こし、磨いていけるはずだ。

急げ!若者たちよ、大切なものが失われる前に。 

温野まき 編集者・時雨出版代表

石油文明に終わりを告げるべき時代の今、50年前、私自身電気もガスも水道もないアフリカから学び、そして琵琶湖流域での地域環境と共同体に根ざした生活環境主義を唱えてきました。かつては「時代遅れのアナクロニズム」といわれていましたが、今こそ「近い水」「近いエネルギー」「近い食」そして「近い人」の価値を発見した「山里をめざす若者」に希望を託し応援したいです。

嘉田由 紀子 環境社会学者/参議院議員

ここでは、「若者は山里をめざす」ことに関して、今まで、語られることが多くなかった「なぜ」が描かれている。本作の大きな価値と新しい感動がここにある。それは、むらの人を描き続ける原村監督だから出来るものであろう。そのため、本作を見る、少なくない若者は、山里に対して心を動かすのではないだろうか。

小田切 徳美 明治大学農学部教授/農村政策論・地域再生論

天からの授かりものに富んだ山里。かつて人はその恵みに欲し、分別ある知恵を働かせて暮らしていたが、欲望にまかせて人がつくり出す財貨に惹き寄せられて都市へと移り住むようになった。しかし、今、その都市生活に心身疲弊した若者が、自然消滅に直面する山里の恵みと知恵に出会い魅せられて、村の知恵者たちと一緒に宝物を再発見し、新たな息吹を吹き込んでいる。天の恵みと人の知恵と技とが織りなす、村と人間の再生を描く希望のドラマである。

原子 栄一郎 東京学芸大学 環境教育研究センター 教授

<共同体こそ未来の光>
国連「家族農業10年」は持続可能な開発目標(SDGs)達成するため、自然と調和した有機農法(アグロエコロジー/農業生態学)が地球環境を守る担い手と推奨した。
かつてサンマ水揚げ日本一の銚子漁港で0(ゼロ)だった衝撃は、気候危機が目前にある警鐘に他ならない。小規模な漁業、農業、林業、畜産があるべき姿に注力する時代になった。
そこで『若者は山里をめざす』は古里へI&Uターンする若者たちが寄り合い知恵を出し合って交流する共同体意識こそ唯一の未来の光だ。

四方繁夫 映像文化批評家

あらゆるものが揃っていて
便利で豊かなはずの都会に暮らしながら、
常に正体のわからない何かに追われる、
時々、そんな不安感に包まれることがある。
 
豊かさとは?
生きるために本当に必要なものとは何だろう?
 
この映画にはそのヒントがつまっている。
 
余計なものを脱ぎ捨てて、
決して若くはない私も、「さあ山里をめざそう!」
そんな気分にさせられた。

金聖雄 映画監督

「若者が山里をめざす」のは懐古主義ではなく、都会での暮らしや働き方がもはや古びれていることの現れのように感じる。私たちが生きる社会は、若者にとって実りある場所になっているだろうか。特別ではない普通の若者が優しく励まされ、そっと背中を押される、そんな場所に山里はなり得ると思う。山里で新しいことにチャレンジする、自分と同世代の若者たちの姿を見て勇気が湧いてきた。

小坂誠 第七藝術劇場支配人

故郷の衰退。都会を目指した若者たちにとって、嘆かわしい現実だ。戻りたくても戻る勇気と覚悟がない。しかし、このコロナ禍で一極集中が多少なりとも崩れだした。地域の宝を再発見し、若者の手で再生する。「おらの田舎には、他に無いものがある」太古から受け継いだ田舎の自慢は、滅びる事はない。映画「若者は山里をめざす」は故郷再生の希望である。

安孫子亘 映画監督

生産性、即時性、効率性――。嫌な言葉である。しかし現代社会は「より多く、より速く」を求め、我々を急き立てる。この映画の中の若者たちは、そんな社会に疑問を持ち、山里をめざした。東秩父の山里で先達から伝統や知恵を受け継ごうとする姿に、わが身を振り返る。消費者運動の中で経済最優先の風潮に抗っているが、そこから抜け出せないのには何が足りないのかと――。観終わった後の深い余韻から抜け出せないでいる。

纐纈美千世 日本消費者連盟事務局長

本作はシナプスだ。知っているような、懐かしいような、近くて遠い山里へのシナプスだ。居場所としての山里にたどり着いた若者、その暮らしに伴走しながら丁寧に描いている本作は穏やかな心持ちにさせてくれる。同時にほろ苦さも。私はなぜ山里的なモノを捨て去ってきたのか。かつての若者をも山里へ繋いでくれる優しいシナプスだ。

大宮浩一 映画監督

若者たちを応援する村のひとたちのまなざしが優しい。
東秩父特産のノゴンボウ、竹の縄、こうぞを漉いた和紙。里山の恵みをいただくために、ひたすら手を動かし、工夫を凝らす。村はこうしたひとたちの営みによって脈々と続いてきたのだ。滔々と流れる時間。丁寧に生きることの尊さを教えられる。農を見つめてきた原村監督ならではの静謐な作品。

永田浩三 ジャーナリスト・武蔵大学教授

若者の生き生きとした姿が眩しい。
多くの人々は、このまま都会の生活を続けていたら自分は雑巾のように使い捨てられる、都会を離れて土と密着した生産に携わりたい、そう願いつつも現状を変えることができないでいる。しかし、未来の時間をたっぷり持つ若者は苦労をものともせず、米を作り、野菜を育て、果物を実らせる生活に飛び込み、山里に息づく伝統を引き継いでいる。そんな生き生きとした姿が眩しい。未来を拓く若者たちにエールを送ろうではないか!

池内了 宇宙物理学者

山里の風景が実に美しい。東秩父の江戸時代からの暮らしを錦絵、写真などで紹介し、現在若者たちがそれに挑んでいる姿が実にほほえましく、私たちの心を和ませてくれる。
農業、林業の従事者は70歳以上の高齢者ばかりで、いずれ消えていくから輸入に頼らざるを得ないということは間違いであることがよくわかる。EUでは農林業で働く人の収入は環境を保全してくれているとして8割は国からの所得補償である。以前私も行ったスイスの山奥では110%だった。保障なしでは所得はマイナスになる。 

山田正彦 元農水大臣・弁護士

村の自然は、村人たちの様子をいつもみている。新しい人が移住してくると、そのまなざしは興味深げだ。そして自然がここで暮らすようにと後押しした人だけが、村に住むことができる。東秩父村にも近い
私の村、群馬県上野村の古老たちは、そんなふうに言う。それが真実かどうかは知らない。
だが、こんな物語とともにある世界に、いま若者たちは惹きつけられている。                      

内山節 哲学者

いま山里をめざす若者たちは幸いだ。外からのエネルギーや食糧が途絶えても生きぬくことのできる人生の先輩たちに囲まれ、惜しみなく教えを受けられる。こんな幸福な形で新たな人生をスタートできるのは先輩たちが健在の「今」しかないだろう。よちよち歩きでも、数年をかけ自らの足で歩く入り口に立つ。
山里への入り方は多様であっていいのだと思える映画だ。

柴田昌平 映画監督

私のゼミでは、毎年、長野県や新潟県の農山村を訪れ調査実習をしています。出演者の高野晃一さんも在学中に参加してくれました。この映画では、地域の宝さがしや、地域住民と外から来た若者の協働、若者による新規事業の立ち上げなど、多くの農山村で試みられていることが、実に丁寧に記録されて
います。農山村の実態を知りたい方や地域づくりに興味がある方にぜひ観ていただきたいです。

高橋健太郎 駒澤大学 文学部 地理学科教授

これは、「消滅可能」を宣告された山村の、再生(リジェネレーション)への道を照らし出す希望の映画だ。20代半ばで故郷の村に帰った主人公のさやかさんは、豊かな自然と頼もしい老人たちに囲まれて深い安心感を覚える。望ましい変化はたしかに必要だ。でも、「その中に変わらなくていい部分があるって思えただけで生きやすくなった」、と。「村」は生き延びていた。そして、そこに集まってくる若者たちを得て、蘇りつつある。

辻信一 アクティビスト・文化人類学者

「古い家のない町は思い出のない人と同じだ」
日本人画家・東山魁夷の残した言葉です。
昭和の文化が見直されている昨今都会から移住し、
自然を愛し地方に残された古民家を再生・活用する若者が増えています。
都会では必死にしなきゃならいSDGs=サステナブル=持続可能が
地方では日々の生活で当たり前におこなわれている『若者は山里をめざす』
変わらないことの素晴らしさ
当たり前の「ひととして大切なコト」を気づかせてくれます。

井上幸一 一般社団法人全国古民家再生協会創設者

プロフィール

鈴木 邦男(すずき くにお、1943年8月2日 - )

鈴木 邦男(すずき くにお、1943年8月2日 - )は、政治活動家、新右翼団体「一水会」元顧問。 既存の右翼と画された行動と言論から「新右翼」と呼ばれる。今では左翼、右翼にとらわれない民族派リベラリストの論客として知られる。

中村真夕(監督、撮影、編集)

ニューヨーク大学大学院で映画を学ぶ。2006年、劇映画「ハリヨの夏」(主演:高良健吾、於保佐代子、柄本明、風吹ジュン)で監督デビュー。釜山国際映画祭コンペティション部門に招待される。2012年、浜松の日系ブラジル人の若者たちを追ったドキュメンタリー映画「孤独なツバメたち~デカセギの子どもに生まれて~」を監督。2015年、福島の原発20キロ圏内にたった一人で残り、動物たちと暮す男性を追ったドキュメンタリー映画「ナオトひとりっきり」を発表。モントリオール世界映画祭のドキュメンタリー映画部門に招待され、全国公開される。最新作、オムニバス映画「プレイルーム」はシネマート新宿で異例の大ヒットとなりアンコール上映され、全国公開される。脚本参加作品としてはエミー賞ノミネート作品「東京裁判」(NHK)29年度芸術祭参加作品がある。

上映情報

都道府県 上映会場 電話番号 公開日 備考
埼玉県 深谷シネマ 048-551-4592 上映終了
新潟県 高田世界館 025-520-7626 上映終了
京都府 京都みなみ会館 075-661-3993 上映終了
兵庫県 元町映画館 078-366-2636 上映終了
東京都 新宿K’s cinema 03-3352-2471 上映終了
神奈川県 あつぎのえいがかんkiki 046-240-0600 上映終了 2/26(日)上映後、原村政樹監督舞台挨拶あり
群馬県 前橋シネマハウス 027-212-9127 上映終了
大阪府 第七藝術劇場 06-6302-2073 上映終了 3/18(土)10:30回上映後、原村政樹監督舞台挨拶あり
神奈川県 横浜シネマリン 045-341-3180 上映終了 2/25(土)上映後、原村政樹監督舞台挨拶あり
東京都 青梅シネマネコ 0428-84-2636 上映終了
埼玉県 川越スカラ座 049-223-0733 上映終了
宮城県 仙台チネ・ラヴィータ 022-299-5555 上映終了
愛知県 名古屋シネマテーク 052-733-3959 上映終了

イベント情報

    2月2日(土)ポレポレ東中野

    ゲスト:○○○○(映画批評家)、○○○○(作家)、○○○○(映画監督)

    上映終了後にトークイベントがあります。整理券は○○時から発券いたします。
    https://www.mmjp.or.jp/pole2/

    2月1日(土)ポレポレ東中野

    ゲスト:○○○○(映画批評家)、○○○○(作家)、○○○○(映画監督)

    上映終了後にトークイベントがあります。整理券は○○時から発券いたします。
    https://www.mmjp.or.jp/pole2/